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PARERO ON ICE 東京公演が終わりました!
2022/12/01
半年以上前から準備していた全国ツアーPARERO ON ICEの東京公演が終わりました!まだこれから千葉公演と長野公演が残っていますので、近くにお住まいの方はぜひ行ってみてください。
ショパンの「バラード1番」をサクソフォン四重奏のために編曲することの難しさと意気込みは以前の記事でも語りましたが、実際に音になっているところを聞くと感慨深いものがあります。
ところで、この曲にある私自身の思い出が、こだわりとなって編曲に出た部分があり、それがこちらの部分です。まずは原曲が次のようになっています。
この右手のBの音は、フレーズの中で最も高い音であり、この楽譜ではクレッシェンドがついていますが、ショパンの自筆譜は、1音目のBにアクセントがついているだけで、他には強弱の指示は一切ありません。
そこで、次のように編曲しました。
クライマックスに再弱音を持ってくるというのは、シューベルトの「野ばら」のような曲が最初期のものと思いますが、これこそがロマン派の響きだと思っています。何度も使うとくどく、また効果も薄くなってしまいますが、曲の中で一度だけ使うというのであれば絶大な効果を発揮してくれると考えています。そこで、今回はこの部分に最弱音のクライマックスを持ってきました。
当日のリハーサルで初めて完成した形を聞き、毎度のことながら素晴らしい完成度に驚かされたのですが、この部分に関して次のように注文を付けました。
「80小節目のppを珠玉の最弱音で歌って欲しい。バリトンの約2オクターヴの跳躍を、できるだけ丁寧に歌って欲しい」
そして、本番の演奏では、私の想像力の限界をはるかに超えた、至高の最弱音での演奏を披露してくださいました。これほどの美しい音が、私の筆から顕れたということが本当にうれしくて、感動的でした。
全体を通して非常に難易度の高い編曲となっていたように思いましたが、それを感じさせない完成度と、自由さをもって演奏してくださったことに、この場を借りて感謝いたします。