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編曲するときの心構え
2022/10/26
今年は編曲の機会を多くいただいておりますが、今年の編曲の最後の本番は11月末〜12月初頭に行われる、PARERO SAXOPHONE QUARTETの全国ツアー「PARERO ON ICE」にご依頼を受けたショパンの「バラード1番」となります。
ショパンの曲は本当にピアノに特化していますが、やはり本当に美しく、また旋律が親しみやすいこともあって、他の楽器だったり色々な編成の楽団もショパンを演奏したいと思うのは自然なことのように思います。そして、もちろん数多くの編曲が生まれているのですが、市民権を獲得するに至ったものは私の知る限りではありません。それどころか、「華麗なる大ポロネーズ」のように、本来オーケストラの部分をピアノで演奏するのが一般的になっているくらいです。
「バラード1番」はまさにピアノのための曲という感じですが、実は編曲には前例があり、ヴァイオリニスト・作曲家であるイザイがピアノとバイオリンのために編曲しています。しかし、これはヴァイオリニストが「バラード1番」を演奏するという目的によって作られているという印象を覚えます。
しかし、私が目指す編曲は、原曲を他の楽器に置換するというものではなく、原曲のアイディアを通して、その楽器の魅力を引き立てるようなものでありたいのです。もっと欲張って言えば、原曲にはない魅力を編曲によって作り出したいと考えています。ポップスにおける編曲というと、まさにそのようなものだと思います。
そこで、原曲至上主義の方には怒られてしまうかもしれませんが、私は編曲するときには恐れることなく、自由に自分のアイディアからなる音を加えたり、原曲にある音を削除することにしています。旋律や和声やリズムといったそのような要素も大胆に変更を加えた上で、曲の持つ推進力と、曲が引き出す楽器の魅力を損なわないことを大切にしています。
例えば、ピアノにおける弱音の表現と、サックスにおける弱音の表現は全く違います。また、それに適した和声や音の高さも全く違います。ですから編曲の際には、楽器の魅力と、原曲の音符と、両方コピーすることはほとんどの場合できないのです。
今回の「バラード1番」は、曲と楽器の魅力を繋ぐために、音だけでなく作曲のアイディアにまで踏み込んで大胆に編曲していきました。
さて、この部分はどの箇所でしょうか?答えは小節番号より!
皆さんのご来場をお待ちしております。